ヒヨドリは都心部などでも姿を見ることができる身近な鳥です。灰色の体にボサボサ頭が特徴的で、「ヒーヨヒーヨ」というよく通る鳴き声は多くの人が耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ハトやカラスに比べれば一般住宅やマンションなどに巣を作ることはそう多くはありません。「ヒヨドリが自宅に巣を作ると縁起が良い」といわれることもあります。そうはいっても、ベランダなどに巣を作った場合、糞や鳴き声に悩まされることもあるでしょう。
今回は、ヒヨドリの生態や被害、対策について詳しく解説します。ヒヨドリへの理解を深めれば、共存するためのヒントが見つかるかもしれません!

ヒヨドリってどんな生き物?

01 ヒヨドリの種類と特徴

ヒヨドリはスズメ目ヒヨドリ科ヒヨドリ属の鳥です。
日本列島、朝鮮半島南部などに分布していますが、日本に生息する数は圧倒的に多く、日本固有種ともいえます。
全身が灰色で頬が茶色、頭がボサボサに見える「冠羽(かんう)」が特徴的です。ムクドリよりスリムで、尾が長く、足が短いのが特徴です。

ツバメのように日本国外から日本へ長距離を移動する鳥を「渡り鳥」といいますが、ヒヨドリもかつては渡り鳥として認識されていました。秋になると越冬のために朝鮮半島などから群れで日本へ渡ってくる冬鳥でしたが、日本の環境に適応し、今では季節による移動をせず一定の地域で暮らす「留鳥(りゅうちょう)」となりました。

北海道など寒冷地に生息するヒヨドリは、現在も秋になると本州、四国、九州など国内の暖かい地方へ南下する「漂鳥(ひょうちょう)」でもあります。そのため、関東以西では10~4月にかけてヒヨドリの個体数が多くなり、この時期に被害が増える傾向があります。

02 ヒヨドリの生態

身近な鳥ですが意外に知られていない「ヒヨドリ」の生態を紹介します。

  • 木がある場所に生息
    ヒヨドリは山間部でも市街地でも、木がある環境であればいたるところで生息しています。木の上で過ごすことが多く、葉菜類や雑草の葉を食べる時以外、あまり地上に降りません。
  • 甘い果物が大好き
    ヒヨドリは雑食ですが、主に果実や野菜を食べ、花や蜜など甘いものを好みます。昆虫や樹木の新芽、木の実なども食べます。他の鳥があまり食べない木の実もよく食べるため、植物の種子を遠くに運ぶのに貢献しています。ムクドリはかんきつ類を食べないのに対し、ヒヨドリはかんきつ類を好みます。
  • 小柄な鳥
    ヒヨドリの身体の大きさは全長約 28cm、体重 70~100gほどです。スズメより大きく、ハトより小さいサイズです。
  • 巧みな飛行技術
    ヒヨドリは数回羽ばたいては羽を閉じ、失速するとまた羽ばたく飛行を繰り返し、波形を描くような独特な飛び方をします。はばたきながら空中に停止する「ホバリング」ができます。
  • 鳴き声が名前の由来
    ヒヨドリは⼤きく甲高い声で「ヒーヨヒーヨ」と鳴きます。この鳴き声が「ヒヨドリ」の名前の由来といわれています。「ピーッピーッ」「ピールルル」「ピーピョロピョロピ」など様々な鳴き方をします。
  • ヒヨドリの天敵は?
    タカ、ハヤブサなどの猛禽類、カラスがヒヨドリの天敵です。ヒナは猫や蛇に狙われることもあります。
  • 被害はその年によって変化
    ツバメなどの渡り鳥のようなはっきりとした「渡り」のパターンはなく、その年の気候やエサの状況で変化するのが特徴です。そのためカラスやハトなどと違い、ヒヨドリの被害の大きさや範囲は毎年大きく変動します。そのため、昨年被害が出なかったからといって今年も出ないとは限りません。
  • ヒヨドリの巣は縁起物!?
    ヒヨドリの繁殖期は5月~9月頃です。一度に3~5 個の卵を産み、ふ化したヒナの世話はオスとメス共同でおこないます。ヒナが巣立つまでの期間が短いのが特徴で、10日ほどで巣立ちます。1回の子育てが約1か月間と短く繁殖期が長いので、同じつがいで年に2、3回子育てすることもあります。
    ヒヨドリはツバメと同じように自力で巣を作ることから、出世や繁栄の象徴、招福の縁起物として言い伝えられており、自宅に巣が作られることは縁起がいいことだとされています。

03 ヒヨドリと人の関わり

ヒヨドリは日本ではごく普通に見ることができる身近な鳥ですが、日本とその周辺でしか生息していないため、ヒヨドリを見るために日本を訪れる海外のバードウォッチャーも少なくないそうです。

ヒヨドリは、平安時代の貴族が好んで飼育していたといわれており、日本人にとっては昔から馴染み深い鳥であることがわかります。
しかし、現代の日本ではヒヨドリを飼育することはできません。怪我をした以外の理由で保護することはできず、保護する場合も届け出が必要です。夏に巣立ち直後のヒナが地面に落ちているが見られることがありますが、飛ぶのに慣れていないだけで保護の必要がない場合がほとんどです。そっと見守ってあげましょう。

ヒヨドリが住み着くとどんな被害が?

フジナガではヒヨドリの被害に悩まされている方からの相談も寄せられます。その一例を紹介します。

  • 農作物被害量は鳥の中で2番目に多い
    ヒヨドリによる農作物被害量は、鳥の中でカラスに次いで2番目に大きいと報告されています。ヒヨドリは甘い物が好物なので、高価な果物が食べられてしまうケースも多く、農家の方にとっては大きな痛手となります。
  • 工場や倉庫の庇に営巣、糞による被害
    ハトやカラスよりは少ないですが、工場や倉庫の庇、家屋の軒下、マンションのベランダに巣を作る場合もあります。生き物なので仕方がないことですが、当然糞による被害が起こります。
  • 鳴き声による騒音被害
    ヒヨドリの鳴き声は遠くで聞いている分には可愛らしいものですが、その鳴き声は小柄な体に反して大きく、笛を鳴らすような甲高い声なので、近い場所で数羽がいっぺんに鳴くとかなり賑やかです。ベランダなどに巣があるとストレスを感じる場合があります。

ヒヨドリに有効な対策

他の鳥と同じく、ヒヨドリも「鳥獣保護管理法」によって許可なく捕獲や殺傷、卵やヒナの捕獲、子育て中の巣の撤去は原則禁止されています。フジナガではヒヨドリを傷つけない対策を行っています。

対策としては、ヒヨドリの侵入を物理的に防ぐ、防鳥ネットでの対策がメインになります。身体が小さいので、目幅が30mm以下のネットを使用して侵入を防ぎます。小さな隙間があると侵入してしまうので、隙間なくネットを張ることが重要です。

BF3バードネット 25

BF3バードネット 15

ヒヨドリはホバリングができるなど飛行も巧みなため、防鳥ネットで対策しても食害を防ぎきれないこともあります。
ヒヨドリが防鳥ネットの上に乗りネットがたわんで作物と接したり、ネットと果樹の距離が近かったりすると、ネット越しに作物を食べてしまうので、防鳥ネットと作物が接触しないように設置するなどの工夫が必要です。

被害を防ぐには、廃棄した農作物をヒヨドリが食べられる状態で放置しないなど、管理する側に自衛する意識を持ってもらうことが必要です。常にエサがたくさんある場所では群れになりやすく、一度そこが安全であると学習してしまうと、周辺で被害が増えてしまいます。多少手間はかかりますが、こまめに廃棄するか土の中に埋めることを心がけましょう。

ヒヨドリの対策は難易度が高い!

ヒヨドリは、鳥害対策を行う専門業者の中でも対策が難しい鳥としてよく名前が挙がる鳥です。その理由は、個体数が多く、小さい体で狭い隙間にも侵入してしまうからです。

フジナガでは、音や光、匂いなど新たなアプローチによる対策を日々研究しています。
これからもヒヨドリを傷つけることなく、「鳥と人との共生」を軸に、鳥害対策に取り組んでいきます。