公園や神社などでよく見かけるハト。平和の象徴でもあり、丸っこいボディで、首を前後にふりながら近づいてくるキュートな姿に、「エサをあげたい、触ってみたい」と思うこともあるかもしれません。ですが、むやみに近づくと思わぬ病気にかかってしまう可能性があります!
ハトなどの野鳥は体内に菌やウイルスを持っています。それは鳥との接触だけでなく、糞や羽毛からも人に感染する恐れがあるので注意が必要です。ベランダや軒下など身近な場所に作られた巣や落ちた糞を放置してしまうことも、感染症などの健康被害が起こる原因になります。
今回は、野鳥が人にもたらす深刻な健康被害をはじめ、代表的な4つの鳥害について詳しくご紹介します。

健康被害

野生の鳥たちは、体内や羽毛などに細菌や寄生虫などの病原体を持っているといわれています。糞が乾燥して空中に飛散し、糞に含まれたカビや菌を人が吸い込むことで感染する可能性があります。また、糞に直接触れてしまい、それに気付かず口に入れたり、傷口に入ったりすることで感染する場合もあります。

健康な人であれば軽症で済むことも多いですが、注意が必要なのは子どもや高齢者など、免疫力の低い人です。場合によっては重症化・死亡するほど怖い病気もあるので注意が必要です。また、鳩の羽や糞に含まれる物質がアレルギーの原因になることや、鳥が媒介するダニなどが喘息発作の原因になることもあります。
以下は鳥がもたらす病気の一例です。

クリプトコッカス菌

  • クリプトコッカス症は、鳥(特にハト)の糞に潜むカビによる感染症です。乾燥に強く、2年以上も糞の中で菌が生存するといわれています。乾燥し粉末状になったハトの糞を人が吸い込むことで発病します。皮膚炎や、発熱・胸の痛みを伴う肺炎、重症になると脳炎や脊髄膜などを引き起こし死亡する場合もある怖い病気です。

オウム病

  • オウム病クラミジアによって感染する病気で、インコ、オウム、ハト等の糞に含まれる菌を吸い込んだり、口移しでエサを与えたりすることによって感染します。発熱、頭痛や倦怠感といったインフルエンザのような症状がみられ、重症化すると肺炎や気管支炎を引き起こすこともあります。
    ごく稀に、妊婦がオウム病にかかり、重症化し死に至るケースもあります。つい最近も、オウム病で妊婦とお腹の中の胎児が死亡するというショッキングなニュースが取り上げられていました。その女性は5日間高熱が続いた後死亡され、死後の検査で体内からオウム病クラミジアが検出されたそうです。
    日本での妊婦の死亡例は現在までで3例と決して多くはありませんが、妊娠中は抵抗力が弱くなりますので感染すると重篤な状況に陥ることや、胎児に影響を与えることもあるので注意が必要です。妊娠中は鳥との濃厚接触を控え、ペットとして鳥を飼っている家庭はこまめなフンの後始末を行い、作業中のマスク着用、作業後の手洗いやうがいの徹底、妊婦や持病がある方は作業しないなどの対策を行いましょう。

鳥インフルエンザ

  • A型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥の病気です。鳥インフルエンザにかかった鳥の羽や、乾燥した糞を吸い込むなど人の体内に大量のウイルスが入ってしまった場合に、ごくまれに感染することがあります。
    日本では鳥インフルエンザにかかったニワトリの処分や施設等の消毒などを徹底的に行っているので、普通の生活をしている中で人が鳥インフルエンザにかかる可能性はかなり低いといえます。感染した鳥との濃密な接触や鳥インフルエンザが発生した現場を見に行くなどの行為は危険ですのでやめましょう。

鳥関連過敏性肺炎(鳥アレルギー)

  • 原因抗原は鳥の皮膚から出る「ブルーム」というタンパク質。いわゆるフケのようなもので、鳥の脂粉や羽毛、糞などに付着しています。このブルームを吸い込んだ時に起こるアレルギー性の肺炎で、発熱、倦怠感、呼吸困難などの症状を引き起こします。鳥飼病とも呼ばれ、鳥を飼っている人に多く見られますが、ベランダの鳥の巣や大量の糞を長期間放置すれば、アレルギーを発症する可能性があります。

鳥が媒介するダニによる皮膚炎や喘息

  • 野生の鳥は、ダニが寄生していることがあります。また、鳥の巣はダニの温床にもなります。それが人に移り、激しい痒みを伴う皮膚炎や、ダニがアレルゲンとなり喘息の症状を引き起こすことがあります。

鳥がもたらす病気をご紹介しましたが、鳥が近くに生息しているからといって過度に恐れる心配はありません。まずはこのような病気があることを知り、抵抗力の弱い方やその家族が気をつけて行動することが大切です。ペットで鳥を飼っている方も、濃厚接触を避けたり、清潔な環境を保つなど正しい行動をしていれば感染は防ぐことができます。

騒音被害

鳥がもたらす代表的な被害といえば、騒音被害が挙げられます。ムクドリやカラスなどの鳥は集団行動を好むので、生活圏内に棲みつかれると、鳴き声に悩まされることになります。特に大群のムクドリの鳴き声は、騒音といえるレベルです。

もしベランダや屋根の上など、日常生活により近い場所に巣を作られようものなら、羽音や足音さえもうるさく、ストレスを感じる場合もあります。巣にひながいる場合、ひなは昼夜を問わず鳴くので、睡眠を阻害されてしまうこともあるかもしれません。

住環境への被害

鳥害は、人が住む生活環境にもさまざまな影響を及ぼします。例えば鳥害によって物が破損した場合は、補修や買い替えにお金がかかってしまうこともあります。

以下は鳥がもたらす住環境への被害の一例です。

  • 糞で車や洗濯物が汚れる
  • 糞から悪臭がする
  • 巣から落ちる糞、羽、小枝で敷地が汚れる
  • 酸性の強いハトの糞で建物が腐食・劣化してしまう
  • カラスにゴミ置き場を荒らされる
  • カラスが石を落下させソーラーパネルを壊す
  • カラスが屋上の防水シートを破り雨漏りがする
  • カラスが排水溝キャップを持ち去り配水管が詰まる
  • 鳥害が多いため物件の資産価値が下がる

農業・水産業への被害

畑や果樹園、漁港での鳥害も深刻な問題です。
農林水産省の発表によると、鳥類による農作物被害金額は令和4年度で約27億円にのぼるとされています。鳥類の中でもカラスによる農作物の被害金額は鳥獣全体の中でシカ、イノシシに次いで第3位となるほどです。

漁業ではウミネコによる昆布への糞害、カモによる養殖ノリへの食害、カワウによるアユの漁業被害などが近年話題となっています。
鳥害は農林漁業を営む人たちの収入に大打撃を与えることもあります。ひいては、消費者である私たちの食卓にも影響を与えることになりかねません。

代表的な4大鳥害から「鳥と人との共生」を考える

今回は鳥がもたらす「健康被害」「騒音被害」「住環境への被害」「農業・水産業への被害」の4つをご紹介しました。これら4大鳥害はすべて、鳥が人の生活圏に飛来し生じた問題です。しかし、鳥の行動や住処を変化させた要因は人にあります。

鳥を悪者として駆除するのではなく、鳥害を減らすにはどうすればいいのか、鳥と共生できる長期的な計画を練ることが被害防止につながると考えています。「鳥と人との共生」を掲げるフジナガグループでは、鳥も人もお互いが住み良い環境を整えることを念頭に、これからも鳥を傷つけない製品の開発やサービス、鳥の生態保全を前提とした対策の推進に取り組んでまいります。