会社や学校の帰り道、夕暮れの空を飛び交うコウモリを目にしたことはないでしょうか。
「洞窟の中に住んでいるイメージだけど、住宅街にも生息しているの?」と疑問に思うかもしれません。コウモリの中には、一般住宅の屋根裏を住処とする種類がいます。そして、コウモリによる被害相談は年々増えています。鳥害対策の調査依頼で現場に行くと実は哺乳類であるコウモリが住み着いていた、というケースも少なくありません。
今回は、コウモリの生態やコウモリが住み着くとどのような被害があるのか、注意点や対策について詳しく解説します。

コウモリってどんな生き物?

01 コウモリの種類と特徴

江戸時代、コウモリは鳥の仲間に分類されていたそうですが、コウモリは哺乳類の仲間です。その中でも、翼を使い自由に空を飛ぶことのできる唯一の生き物です。世界各地には約1000種のコウモリが、日本では35種類ほどが生息しているといわれています。(種数は分類説により異なります)。

日本で見られるコウモリの中で唯一、市街地に生息し家屋を住処とするのが「アブラコウモリ」です。家屋の屋根裏・天井裏に巣を作るため通称「イエコウモリ」とも呼ばれます。

02 アブラコウモリの生態

私たちの生活範囲内でよくみかける「アブラコウモリ」の生態を紹介します。

  • 夕暮れの空を飛び交う
    夜行性のアブラコウモリは街灯の光に寄ってくる虫を食するため、日没後の2時間に最も活発になると言われています。
  • 羽虫、昆虫が主食
    アブラコウモリは蚊や蛾、ハエ、カメムシなどを捕食する食虫性です。一晩で食べる虫の数はなんと500匹ともいわれます。コウモリの語源由来は蚊などの小さな虫を食べることから、昔は「蚊屠り(かほふり)」、蚊を好むことから「蚊を欲り(かをほり)」と呼ばれ「コウモリ」という名前になったとの説があります。
  • 洞窟や山間部には住まない
    洞窟などに住んでいるイメージのコウモリですが、アブラコウモリは山間部など自然環境には生息しません。家屋の屋根裏のほか、高速道路の橋脚の隙間などにも住み着きます。一年中温度が一定で、フクロウなどの天敵から身を守ることができる居心地の良い空間を選んでいるといえるでしょう。
  • 小さい身体が特徴
    コウモリは「オオコウモリ・ココウモリ」に大分されます。アブラコウモリは小型の「ココウモリ」に分類され、重さは5~10g程度。体長は5cmほどですが、翼を広げると20cm近くあります。黒褐色や暗灰褐色の体毛に覆われ、黒っぽい見た目をしています。
  • 実は体が軟らかい
    一見、骨が浮き出て硬そうなイメージのアブラコウモリですが、実はとても軟らかく、体を器用に折りたたむことができます。そのため1.5~2㎝程度のわずかな隙間があれば侵入することができます。
  • 鳴き声は人には聞こえない!?
    アブラコウモリの鳴き声は人の耳で聞き取れない音域、つまり超音波のため、基本的に鳴き声を聞くことはできません。ですが危険を察知した場合に発する「キィキィ」「チチチチ…」という声を人が聞き取れることもあります。
  • 超音波でエサを探す
    アブラコウモリは超音波を発し、反響する音を頼りに虫の位置や、周囲の環境を認識する「反響定位(エコーロケーション)」という特殊な能力を持っています。視覚に頼らず暗闇を飛ぶことができるのもこのためです。
  • 逆さまにぶら下がる姿が印象的
    アブラコウモリを含め一般的にコウモリは、筋肉や骨を失うことで体を軽くし、飛ぶことに特化した体に進化したといわれています。筋肉や骨がない代わりに、脚には特殊な腱(筋と骨を支える組織)があります。そのため足のツメを引っかけるだけというリラックスした状態でぶら下がることができるのです。ヘビなど地上の天敵に襲われないというメリットもあります。
  • 糞が特徴的
    アブラコウモリの糞は5~10mmの小さくて乾燥した黒い固まりです。チョコレートの粒のお菓子のような形状をしており、プロが見ればアブラコウモリかそうでないかは判別が付きます。一般の人が見るとネズミの糞にも見えるかもしれません。玄関先など屋外でその糞が見られる場合はアブラコウモリだと考えてよいでしょう。
  • アブラコウモリの天敵は?
    フクロウなどの猛禽類やヘビなどが天敵だといわれています。
  • 冬眠しないアブラコウモリもいる!?
    春先から活発になり、夏頃に子どもを産みます。11月頃から3月初旬くらいまで冬眠するのが一般的ですが、住宅などは冬でも暖房を入れているので温かく、冬眠せず活動する個体もいるといわれています。
  • 繁殖すると数年で集団に!
    アブラコウモリの寿命は3~5年です。アブラコウモリの繁殖スピードは年に2~4匹で、一匹の雌が生涯に産む数は8匹前後と言われています。天井裏に住み着いて繁殖してしまうと数十匹の集団になることもあります。

03 コウモリと人の関わり

コウモリに対して「不気味・不吉」といったあまりよくないイメージがあるかもしれません。ですが、コウモリは昔から川辺の害虫を捕食し生態系を守る益獣として扱われてきた一面もあります。先ほどコウモリの名前の由来について触れましたが、「川守(カワモリ)」がその名の由来であるという説もあるのです。
また、中国では古くから「コウモリ=蝙蝠」は「福に変わる」という発音と同じことから幸福の象徴として尊重されてきました。日本でもこの影響を受け、福を呼ぶ縁起のよい吉祥柄として家紋や着物の柄に用いられてきた歴史があります。国や時代によって、印象がガラリと変わるのはおもしろいですね。

コウモリが媒介する病気とは?

「コウモリを追い払おうとして手を噛まれた」という報告は少なくありません。天井裏を住処にするアブラコウモリは、大人の手の平程度の大きさなので、手で追い払うこともできそうですが、手を出した瞬間に噛まれることもありますので絶対にやめましょう。
海外ではコウモリが狂犬病を保有していることが報告されています。狂犬病は発症してしまうと致死率はなんと100%という恐ろしい病気です!幸い国内ではコウモリによる狂犬病感染の事例はありませんが、海外では死亡事例も報告されています。

他にもコウモリを原因とした下記のような病気も報告されています。

  • ハンタウイルス
  • アルボウイルス感染症
  • ヒトプラズマ症

また、コウモリの糞にはさまざまな病原菌や寄生虫がいます。身体にもノミやダニなどがたくさん付着しています。それらが原因で病気やアレルギーを発症するリスクもあります。死骸であってもコウモリには絶対に触れないようにしましょう。
コウモリに「触れた、引っかかれた、噛まれた」といった場合、「しばらく様子を見てから受診しよう」という対応は大変危険です。休日や夜間であっても病院に連絡の上、すぐに受診してください。それくらい緊急度が高いと認識しておきましょう。

コウモリが住み着くとどんな被害が?

フジナガではコウモリの被害に悩まされている方からの相談も多数寄せられます。その一例を紹介します。

  • 糞尿で天井や壁にシミが続出
    生き物なので仕方がないことですが、コウモリが住み着くと、当然糞尿の被害が起こります。コウモリは集団で生息し糞尿の回数も多いので、天井や壁にシミを作る原因になります。シミに気付いた時にはすでに被害が大きくなっているケースも多々あります。
    糞尿を放置していると、カビの繁殖やゴキブリ・ダニなど害虫の発生に繋がったり、不快な匂いが部屋に充満したりと、不衛生な状態を引き起こします。木材なども腐りやすくなり老朽化が進む原因にもなります。
  • ビルの機械室が糞だらけに
    暗く奥まっている人の出入りの無い機械室は、コウモリにとって邪魔者のいない快適な場所です。点検のため久しぶりに入ったらコウモリの糞だらけ、アンモニア匂が充満していたという事例もよくあります。
  • 羽音による騒音問題で睡眠不足に
    コウモリが羽ばたく「バサバサ」という音は大きく、集団で住み着いた場合、かなり騒がしい羽音が聞こえてくることがあります。不眠や集中力の低下、ストレスの原因となる可能性があります。

コウモリに有効な対策

コウモリは、「鳥獣保護管理法」によって保護されており、許可なく捕獲や殺傷、子育て中の巣の撤去をすることは原則禁止されています。たとえ自宅にコウモリが住み着いていたとしても、殺さず外に追い払い、再び侵入しないよう物理的に侵入口を塞ぐことが重要です。
目の細かいメッシュタイプの金網、鉄板、コーキング剤、忌避剤などで侵入口を塞ぐ対策が有効となります。

当社ではコウモリ専用の忌避剤を取り扱っています。

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屋根裏など狭い場所に上がるのは危険を伴いますし、コウモリや糞と接触すると健康被害の恐れもあるため、コウモリ対策は専門会社に依頼することをお勧めします。

コウモリの対策は難易度が高い!

ハトやカラスなど、様々な鳥を相手に長年対策を行ってきたフジナガですが、コウモリは特に手強い動物だと言わざるを得ません。その理由は、侵入経路を見つけることが非常に困難だからです。コウモリは体が小さく軟らかいため、瓦の隙間のような狭い隙間からも侵入することができます。そこから侵入できないよう隙間を塞いでも、また別の隙間から侵入し、対策に時間を要する場合があります。

また、防鳥ネットを破り中に入り、天井にぶら下がるので、バードピンは意味をなしません。鳥に有効な対策がコウモリには効果がないのが現状です。

難しい課題ではありますが、新たなアプローチによる対策を日々研究しています。
これからもコウモリや鳥を傷つけることなく、「人との共生」を軸に、対策に取り組んで参ります。