
全国各地で活躍するフジナガ社員たちが、日々の経験から得た知見や業界トレンドを臨場感たっぷりにお伝えする新企画「現場発!鳥害対策のリアルストーリー」。
第三回目となる今回は、東北営業所で所長を務める長倉勇太さんにインタビュー。
関西から東北に異動して約4ヵ月、一般住宅から空港に至るまで、幅広い現場で活躍する永倉さんに、東北エリアならではの鳥害事情や、対策の際に気をつけていることなどについて伺いました。

東北営業所 長倉勇太さん
東北地方特有の鳥害事情
東北地方のような寒い地域では、ハトやカラス以外に農作物や生活環境に被害を与える鳥の種類はありますか?
ハトやカラス以外で、東北特有の鳥による大きな被害は、今のところ感じていません。
ただ、関西では聞いたことがなかった「チョウゲンボウ」という鳥の名前はよく耳にするようになりました。かつては本州中〜北部の川沿いや海岸の崖地で主に繁殖していた鳥で、近年では南関東の都市部でも繁殖が増加しているといいます。

チョウゲンボウ
- 生息地:北海道(希な旅鳥、留鳥:中部)、本州北・中部(留鳥)、本州南西部(留鳥:京都、希に繁殖:大阪、冬鳥)、四国(冬鳥)、九州(冬鳥)、沖縄(冬鳥)
- 生息環境:崖に近い農耕地、草原に生息。崖に近い農耕地や草原に生息し、人工建造物を含む高さ10m以上の垂直な側面で、見晴らしが良く屋根があり出入口が狭い横向きの空間に営巣する傾向がある。
- 全長:オス30cm、メス33cm
- 主な食べ物:ネズミ、鳥、昆虫
また、なぜなのか理由はわかりませんがコウモリ対策に関するお問い合わせは意外と多いですね。東北営業所では被害が起きている現場での対策施工は行っておりませんが、フジナガの製品としてコウモリ専用の忌避剤を販売しています。

▼コウモリの被害について詳しくはコチラ

⇒コウモリの対策とは!?鳥に有効な対策がコウモリに効かない!?
関西地域と東北地方で鳥害対策への意識に違いはありますか?
関西で営業をしていた頃は、新築マンションの設計段階からすでに鳥害対策が織り込まれているケースが多く、被害が出る前の事前対策が主流でした。しかし、東北営業所に来てからは、すでにハトの被害が発生している場所での対策実施が圧倒的に多いです。仙台などの都市部では鳥害対策の認知度も高まりつつありますが、岩手や福島など地方に行くほど鳥害対策への認識はまだ低いと感じます。
新規営業で地方を回ると、「鳥害対策専門の会社なんてあるんですね」と驚かれるほどです。特に海沿いの地域などでは「かすみ網を張って対策しているから大丈夫です」という声も少なくありません。

「かすみ網」による対策とは、どのようなものですか?
「かすみ網」は、細い糸(近年ではテグスなども用いられる)を菱形に編んだ漁業用の網で、要は簡易的に鳥除けネットとして使用されている状況です。
しかし、これを鳥害対策に使用すると、菱形の網目がヨレてしまいピンと張ることができず、ハトがぶつかった際に引っかかって死んでしまうケースが多々あるんです。
フジナガは「鳥との共生」を目指し、鳥に優しい鳥害対策アイテムを開発しており、防鳥ネットは網目が真四角になっているものを使用しています。上下をテンションでピンと引っ張ることができるので、鳥が絡まってしまう心配がありません。
▼ 防鳥ネットについて詳しくはコチラ

東北営業所に赴任されてから、特に印象に残っている現場はありますか?
東北地方ならではの事例として、市営団地、特に震災後の復興住宅での鳥害が目立ちますね。あくまで私の推測ですが、復興住宅から退去する人が増え、空き室が多くなったことでハトにとって恰好の営巣場所となっているのではないかと思われます。
被害レベルがすでに最終段階に達していて、糞が10センチ以上堆積していたり、卵が散乱していたりする場所もありました。特に印象的だったのは、玄関先のポーチに巣を作られていたケースです。玄関を空けてすぐのところなので、人が住んでいれば巣を作るはずがない場所です。関西では見たことのない事例だったので「こんなところに巣を作るのか」と驚きました。

▼鳥害の被害レベルについて詳しくはコチラ

⇒ハトが巣を作りやすい環境についてはこちらでも詳しく解説しています。
その現場では、どのような対策をされたのですか?
防鳥ネットでハトの侵入を防ぐのが最も有効ですが、玄関ポーチにネットを張るわけにはいきません。そこで、建物全体を広く見て、開口部分である廊下と階段全体に防鳥ネットを施工しました。1階と屋上はどうしても開いたままになってしまいますが、1階からハトが侵入することはほとんどないので、ある程度の効果が期待できます。
雪国ならではの対策の工夫
積雪地域での鳥害対策で、特に気をつけるべきポイントはありますか?
積雪の多い地域では、防鳥ネットを取り付ける際の施工方法が大きく変わります。
例えば、マンションの吹き抜けに防鳥ネットを張る場合、関西でば風の抵抗を考慮して、強度の強いバードネット50の耐久タイプという線形が太いネットを使用していました。しかし東北ですと雪の重みでネットが落ちてしまう可能性があります。そのため、ワイヤーを這わせて風の抵抗や雪の負担を軽減したり、あえて斜めにネットを張ったりする工夫が必要になります。
▼防鳥ネットについて詳しくはコチラ
スケジュールの進め方も、関西とは異なりますか?
そうですね。施工を発注いただいたとしても、「雪が降る前、もしくは3月・4月に施工しましょうか」とお客様の方から打診されることが多いですね。やはり、雪の多い1月・2月は特別な安全対策が必要になったり、通行止めになって建設資材が搬入できなくなって工期が伸びてしまったりということが多々ありますからね。

東北エリアの多様な施設で鳥害対策を展開中
新潟県も東北営業所の管轄だそうですね。どのような鳥害対策が多いですか?
新潟はハト被害が非常に多いです。一次産業が盛んで田んぼが広く、水場や餌場も豊富でハトが集まりやすいので、周辺の工場や倉庫に被害が及ぶことがあります。そういった環境の工場から鳥害対策を依頼されることが多いですね。
また、新潟空港の滑走路周辺にある連絡塔などの建物に防鳥ネットによるハト対策を実施しました。空港における鳥害対策は、単に鳥を追い払うだけでなく、航空機の安全運航にも直結する重要な課題です。2024年に韓国で起きた旅客機事故の影響で、バードストライクの防止策も注目を集めています。滑走路そのものへの対策は難しいですが、周囲の建物への営巣や侵入を防ぐことで、滑走路への侵入も副次的に防ぐという目的があります。
私たちの仕事は、人と鳥の共生を実現するための重要な役割を担っています。これからも、クライアントと地域社会の双方に貢献できるよう、最適で持続可能な対策を提案していきたいと考えています。
東北地方ならではの興味深い話が聞けました。ありがとうございました。