
畜産業界では、野鳥がもたらす鳥インフルエンザなどの病原体伝播や、施設への侵入による被害は深刻な問題となっています。
特に高病原性鳥インフルエンザに関しては、2024年10月から2025年3月時点で14道県51事例が発生し、約932万羽もの家禽が殺処分の対象となりました。この事態は、養鶏農家の経営に深刻な打撃を与えるだけでなく、行政や関係団体職員の防疫作業の負担を強いることになり、さらには鶏卵の生産量が減少することで鶏卵価格が高騰し、消費者である私たちの家計を圧迫するなど、様々な影響を及ぼします。
家畜飼養施設では、安全で衛生的な飼育環境を維持するための鳥害対策が急務であると言えるでしょう。
本記事では、畜産業界における鳥害の実態と対策の必要性、具体的な対策のポイント、そして実際の成功事例を、鳥害対策の専門業者の視点から詳しく解説します。

なぜ対策が必須なのか?鳥害が畜産業界にもたらす4つの問題
畜産業界における鳥害は、経済的損失や公衆衛生上のリスクに直結する深刻な問題です。鳥害が畜産業界にもたらす問題点として、以下のようなものが挙げられます。
- 感染症リスク:鳥インフルエンザなどの病原体を媒介
鳥類は、様々な病原体を媒介する可能性があります。特に警戒が必要なのは、鳥インフルエンザです。水鳥や渡り鳥などによって媒介される鳥インフルエンザウイルスは、感染した鳥との直接接触や、糞尿で汚染された水を介して家禽に感染を広げるリスクがあります。
万が一、鳥インフルエンザの感染が確認された場合、感染拡大を防ぐために、家畜の全頭処分という厳しい措置が取られることがあります。これは、畜産農家にとって経済的に壊滅的な打撃となり、食料供給にも深刻な影響を及ぼしかねません。

- 衛生問題:鳥の糞尿による汚染と寄生虫の媒介
野鳥の糞尿は、飼料や水、畜舎などの施設を汚染する原因となります。糞尿には、サルモネラ菌や大腸菌などの様々な細菌や寄生虫が含まれており、家畜の健康を害するだけでなく、畜産物の品質を低下させ、食品としての安全性を損なう可能性もあります。
さらに、野鳥はダニや寄生虫を運んでくることもあります。これらの寄生虫が家畜に寄生すると、皮膚炎や貧血などの症状を引き起こし、家畜の成長を阻害する原因となります。結果として、生産効率の低下を招き、経営を圧迫する要因となりかねません。

- 家畜の健康への影響:飼料の食害と家畜への外傷
野鳥が家畜の飼料を横取りしたり、散らかしたりすることで、飼料コストの増加や、家畜が十分な飼料を摂取できなくなることで、発育不良や生産性の低下にもつながる可能性があります。
稀ではありますが、野鳥が家畜を攻撃したり、驚かせたりすることで、家畜が怪我をするリスクも否定できません。特に、デリケートな家畜の場合、ストレスによる免疫力低下も懸念されます。

- 管理コストの増大:施設や設備への被害
野鳥の侵入は設備の破損を招き、管理コストを増大させる可能性があります。
野鳥の糞尿は、金属やコンクリートを腐食させる性質があり、長期間放置すると施設の劣化を早めます。また、野鳥が換気扇や排水口などに巣を作ると、設備の故障や機能低下を引き起こす可能性があり、修繕費用がかさむ原因となります。


畜産業界における鳥害対策のポイント
大切な家畜を守るためには、施設内に鳥を侵入させないことが予防対策の重要なポイントとなります。ハトやカラスに加え、スズメなどの小鳥の侵入も防ぐには、高いレベルの対策が求められます。
ここでは、効果的な鳥害対策を実施するための3つの重要なポイントと、フジナガが使用しているアイテムの一例をご紹介します。
■ 防鳥ネットの効果的な設置が有効
鳥の侵入を物理的に防ぐには、施設全体に防鳥ネットを張り巡らせる対策が有効です。鳥は狭い隙間を見つけるのが得意なので、隙間なくしっかり施工することが大切です。高所など設置の難易度が高い場所も専門業者に依頼すれば安全です。
フジナガのバードネットは特殊取付具を使用することで取付先を選びません。隙間無く取付られるので、クリーンな空間を確保できます。頑固な鳥も確実に撃退します。

フジナガでは、忌避剤やバードピンの取り扱いもありますが、天然成分由来で安全性が高く人体や動物への悪影響がない忌避剤とはいえ、家畜や飼料に付着すると見た目にも良くないので、広範囲に忌避剤を塗る対策はあまり推奨できません。
また、バードピンも、鳥の着地を防止するのには有効ですが、設備の構造によっては設置が難しい場合もあります。


■ 耐久性に優れた素材選びが重要
鳥がつついてネットを破損し侵入してしまうリスクを防ぐため、丈夫で耐久性に優れたバードネットを使用するのが重要です。
フジナガでは、太さや素材の異なるバードネットを多数取り揃えており、強度や耐久性、強風、積雪等の厳しい環境や状況でも効果を発揮します。


BF3バードネット オールステンレス50(オールステンレス防鳥ネット)
■ 作業性と家畜の安全性を考慮した設置が必要
防鳥ネットの設置にあたっては、作業者の出入りや家畜の管理が容易に行えるよう、工夫が必要です。出入り口の設置や、ネットの一部を開閉可能にするなど、作業効率と安全性を両立できる設計を心がけることが求められます。
フジナガのバードネットはネット開閉をスムーズに行える「カーテンレールタイプ」、開口部を完全には固定せず人の通り抜けが容易にできる「のれんタイプ」など、施工場所の状況に合わせて設置方法を選ぶことが可能です。
■ 小さな鳥の侵入を防ぎたい場合は網目の幅(目巾)に注意
ハトに対しては網目の幅が50mm程度のネットが適していますが、スズメなどの小さな鳥が多く生息する地域では、より小さな15mm程度のネットの設置が有効です。
当社のバードネットは、鳥の種類ごとに目巾が設計されているので、スズメなどの小さな鳥にも対応可能で、鳥が絡む事もなく安心です。極細で軽いネットなの圧迫感もなく、美観も損ねません。

畜産業界における鳥害対策の現状と成功事例
畜産業界における鳥害対策の成功事例のひとつをご紹介します。
鹿児島営業所では昨年、新築の牛舎への鳥害対策を実施いたしました。まず、箱形の牛舎の出入り口にカーテン式のバードネットを取り付け、作業者や牛が移動する際の鳥の侵入防止を実現しました。
また、万が一侵入した際も、天井に止まれないよう、天井全面にもバードネットを設置しました。
近年、鳥害対策への意識の向上により、施設を新築する段階からあらかじめ鳥害対策を盛り込んでおく事例が大変増えています。既存の施設への対策は、建屋と建屋の境目に隙間が多いなど、侵入防止対策が必要な箇所が多岐に渡るので、どうしても費用がかかってしまいます。新築からの対策を盛り込むことが一番コストがかからず効果的であると言えます。

畜産業界における鳥害対策は物理的・技術的アプローチの継続がカギ
鳥インフルエンザなどの感染症から家畜から鳥害を守り、生産性を維持することは、畜産農家の生活を守る上でも、私たち消費者の食生活を守る上でも、非常に重要です。畜産業界における鳥害対策は、物理的、技術的アプローチの継続が必要になるため、早期対策と専門業者への相談をおすすめします。
フジナガは、「鳥と人との共生」を社是とし、鳥を傷つけない鳥害対策アイテムの開発や、鳥の生態保全を前提とした鳥害対策の推進に取り組んでいます。
畜産業界での施工経験が豊富な鳥害対策プランナーが、現地調査の上、現場の状況や条件にあったプランをご提案し、お客様の鳥害対策へのご理解とご安心をサポートさせていただきます。鳥害にお困りの方、施工方法・資材への疑問や不安をお持ちの方はお気軽にご相談下さい。
