
日本の社会インフラを支える電線や電柱は、電気送配電だけでなく通信網の要としても機能しています。これらのインフラは、鳥にとっても営巣場所や休息地として重要な役割を果たしていますが、近年、鳥が集まることによる糞害や、営巣に伴う火災や停電などのトラブルが多発しています。そのため、鳥と人との共生を考慮した対策が求められています。
この記事では、電線・電柱における鳥害の現状と対策、今後の展望について、鳥害対策の専門業者の視点から詳しく解説します。
電線・電柱に止まる鳥の種類
電線や電柱に鳥が止まっている光景は、都市部から郊外まで日本のあらゆる地域で見られます。電線や電柱に止まる鳥の種類は、主に都市環境に適応した小型・中型の鳥が中心です。以下に代表的な種類を挙げます。
◼️ スズメ
◼️ ムクドリ
◼️ カラス
◼️ ハト
これらの鳥にとって、電線・電柱は「人工の樹木」のような存在であり、主に以下のような目的で利用していると考えられます。
◼️ 営巣場所
◼️ 安全確認や休息場所
◼️ 餌場探索の中継地点
◼️ 群れの集合場所
つまり、電線や電柱は、人間だけでなく鳥にとっても重要なインフラになっていると言えるのです。
⇒ ハト・カラス・スズメ・ムクドリの生態についてはこちらでも詳しく解説しています。
電線・電柱における鳥害と深刻なリスク
電線に一列に並ぶ鳥の姿はほほえましくもありますが、一方で鳥害による深刻なリスクも潜んでいます。特に、以下のような問題が挙げられます。
- 糞による景観悪化
鳥の糞が電線の周囲にある家屋や車、歩道などを汚染し、景観を損ね、生活の質を低下させます。特にムクドリは大きな群れで行動し、一時的な停留でも大量の糞を落とすため、糞害が深刻化しやすくなります。
- 糞による金属や塗装の腐食
糞の酸性成分は金属や塗装を腐食させます。例えば、カーディーラーの屋外展示車両に糞が落ちると、塗装を傷めるなど商品価値の低下につながります。電柱自体にも金属製の部品が多いため、腐食による設備の劣化を招きます。
- 糞による健康リスク
乾燥した鳥の糞が粉末状になって風に舞い、糞に含まれたカビや菌を人が吸い込むことで呼吸器系の疾患や感染症に罹るリスクが高まります。特に注意が必要なのは子どもや高齢者など、免疫力の低い人です。場合によっては重症化する病気もあるので注意が必要です。

- 営巣による停電リスクなどインフラへの影響
鳥が電柱に巣を作ったり、電線に接触したりすることで、停電が発生する可能性があります。特に、カラスはハンガーや針金を巣の材料として使用する傾向があり、それらが電線に接触すると、漏電・火災・停電を引き起こすこともあります。また、近年はカラスが通信ケーブルを破損させる事例も増加し、通信障害やインフラへの影響が新たな課題として注目されています。
電線・電柱での鳥害に困った時の対処法
家の近くの電柱に鳥が巣を作ったり、電線にたくさんの鳥が集まったりして、糞害や鳴き声による騒音に悩まされた場合はどうすればいいのでしょうか。
電線や電柱などへの対策は、資格を有する電力会社・通信会社などの管理会社でなければ作業できません。鳥害に困った時は、電柱に記載されている管理番号を確認し、該当する会社へ連絡しましょう。複数の会社が共同使用している電柱の場合、両方に連絡が必要なケースもあります。
また、自治体によっては、鳥害を公害と認識し、鳥獣害対策窓口を設けている場合があるので、相談してみるのもよいでしょう。
電線・電柱に適した鳥害対策
当社が単独で電線・電柱への鳥害対策を行うことはできませんが、電力会社や通信会社などの専門業者への製品提供や、施工受注といった形で関わらせていただくことがあります。
電線・電柱での鳥害対策に用いられる効果的な方法として、以下のようなものが挙げられます。
- テグス
電線上の鳥害対策として主流になっているのは、テグスを使用した対策です。透明なテグスを電線に沿って設置することで、鳥を止まりにくくし、被害の抑制に効果的です。設置が簡単で、コストも抑えられるため導入しやすい対策です。テグスを固定するためにクリップのようなものを電線に取り付けるので、見た目には多少変化が生じます。
- 樹脂製のバードピン
電柱や変圧器ボックスの上には絶縁性が高く安全な樹脂製のバードピンが多く使われています。物理的に鳥を止まらせないことで、被害を防ぎます。ステンレス製のバードピンは感電リスクがあるため、電柱の対策には不向きです。
- 忌避剤
決して多くはありませんが、試験的に忌避剤を使用しているところもあります。しかし、メンテナンスの際に人が触れて滑ってしまうリスクもあるので、注意が必要です。

個人でできる鳥害対策
自宅の2階の窓付近に電線があるなど、状況によっては「個人でもなにかしら対策をしたい」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。個人でできる簡易的な対策としては、キラキラした反射テープなどを吊り下げて鳥を遠ざける方法があります。ただし、鳥は学習能力が高いので、音や光での忌避効果は一時的なものとなる可能性があります。鳥が寄り付く前の予防策としては有効ですが、すでに休憩場所として定着している場合は、根本的な解決には至らないでしょう。
⇒ 個人でできるハト対策についてはこちらでも詳しく解説しています。
鳥の生態系保全とインフラ保護の両立が重要
電線や電柱における鳥害は、糞害による衛生問題や営巣による設備トラブルなど、私たちの生活やインフラに大きな影響を及ぼします。インフラの安全を確保するためには、電力会社や通信会社といった専門業者による対策が不可欠です。
当社は、電力会社や通信会社など専門業者と連携し、製品提供、施工受託、コンサルティングといった支援を行い、皆さんのライフライン保護を支えていると自負しています。
日本では景観保全や災害時の倒壊リスク軽減の観点から、無電柱化計画が進められていますが、欧米諸国と比較して整備ペースが遅れているのが実情です。そのため、今後も鳥害対策技術の進化が期待されており、当社でも電力・通信各社とタッグを組み、最新テクノロジーを駆使した鳥害対策製品の開発に全力で取り組んでいます。
フジナガは、現場の声に耳を傾けながら、今後も新たな製品・サービスの開発を通じて、人と鳥双方にとって居心地のよい環境の創出に貢献してまいります。