春は多くの鳥が繁殖期に入り、巣作りやテリトリー確保のために行動が一気に活発化する季節です。この時期の鳥は警戒心や執着心が強まり、場合によっては人に対して攻撃的な行動を取ることもあります。この時期に鳥が建物や施設に定着してしまうと、その後の被害拡大や衛生環境の悪化を防ぐことが非常に難しくなるため、春先は鳥害対策の「ターニングポイント」といえます。

今回は、春先に活動的になる鳥の生態や鳥種別の対策について、鳥害対策の専門業者の視点で詳しく解説します。

春は、鳥たちが「執着」を深める季節

日本では3月中旬から下旬にかけて気温が上昇し、気候が安定します。それに伴い、鳥たちの繁殖に向けた行動も大きく変化します。早い個体では1月後半から準備を始めますが、3月中旬から4月にかけて、巣作りや繁殖に向けた動きが一気に加速します。

この時期が鳥害対策の「ターニングポイント」と呼ばれる最大の理由は、鳥たちの場所に対する執着心と攻撃性が、繁殖を境に急激に高まるからです。一度卵を産み、ヒナを育てる場所と決めてしまえば、そこは鳥にとって何があっても守るべき“聖域”となります。
この段階で建物や施設が「安全で快適な場所」と認識されてしまうと、対策の難易度は一気に上がります。糞害による衛生環境の悪化や騒音被害などが慢性化し、結果的に長期的な問題へと発展してしまうのです。

この春という季節要因に加えて、もう一つ見落とされがちなのが、建物や周辺環境の急激な変化です。例えば、春先までは何もなかった場所に、大規模なショッピングセンターや物流倉庫が突然建設されるケースがあります。これまで人工物がほとんどなかった場所に、急に大きな構造物が現れると、鳥にとっては格好の観察対象になります。立体駐車場の上部や機械室の下などは、外敵から身を守りやすく、暖かく雨風を避けられる環境が整っています。鳥は非常に学習能力の高い生き物なので、その建物が初めて目にする場所であっても、経験上「巣にするには理想的な環境」と判断されれば、短期間で定着が進むことも珍しくありません。

人間に例えるなら、最初はワンルームに住んでいたものの、家族が増えたことをきっかけに、より広く、より住みやすい場所へ引っ越す感覚に近いといえるでしょう。治安が良く、環境の整った場所を選ぶという点では、鳥も人も大きく変わらないのです。

このように、春の繁殖期と、新しい建物の出現というタイミングが重なると、これまで被害がなかった場所でも鳥が寄り付く確率は一気に高まります。
以下では、春に被害が深刻化しやすい代表的な鳥種と、その習性を踏まえた対策を紹介します。

鳩(3〜5月):定着・巣作りの固執度が高まる季節

鳩は、オスもメスも体内で栄養豊富な「ピジョンミルク」を生成できるため、一年中繁殖が可能です。そのため、エサの少ない冬でも子育てはできますが、特に3〜5月は活動が活発化し、巣作りへの執着が強まります。

鳩は繁殖能力が高いだけではなく、巣立った若い鳩がその周辺に新しい巣を作ることも少なくありません。一度巣を作られると、糞害による悪臭や衛生環境の悪化、ダニなどの害虫発生、金属部分を歩く音や鳴き声による騒音被害など、日常生活に支障をきたすレベルまで被害が拡大する恐れがあります。

▼ 鳥の被害についてはこちらでも詳しく解説しています。

⇒ 鳥がもたらす深刻な健康被害とは!?

鳩は人への警戒心が比較的低く、人の生活圏は外敵から身を守りやすい環境であるため、マンションやアパートのバルコニー、立体駐車場の上部、ビルの密集地などに巣を作りやすい傾向があります。特に雨風をしのげる場所は要注意です。
鳩には独特の行動パターンがあります。いきなり巣を作るのではなく、まず天敵を察知しやすく逃げやすい、建物の高い端部(パラペットなど)に止まり、周囲の安全を入念に確認します。この「偵察段階」のうちに、鳩を寄せ付けない環境を整えることが非常に重要です。以下では鳩の接近度合を初期段階と中期段階に分けて、それぞれにオススメの鳥害対策を紹介します。

▼ ハトの生態、習性についてはこちらでも詳しく解説しています。

⇒ ハト対策の第一歩。ハトの生態、習性について

  • 初期段階の鳩対策
    バルコニーの手すりや床に少量の糞や枝が見られるようになった場合、鳩が一時的な待機場所として利用し始めている可能性があります。この段階で対応を怠ると、鳩はその場所を「安全で巣作りに適した環境」と学習してしまいます。
    まずは「鳩を寄せ付けない対策」が必要です。
    電気ショック対策や、忌避剤を設置し、「ここは居心地が悪い場所だ」と認識させることが効果的です。
    工場や倉庫、学校、病院などの大規模施設では、電気ショック対策が非常に有効ですが、個人宅のバルコニーなど限られたスペースでは、忌避ジェル(バードジェル)の使用が現実的かつ効果的といえるでしょう。当社のBSバードジェルの主成分は植物エキス(食品添加物)と保湿剤(医薬品添加物)で鳥はもちろん、他の動物への悪影響がないため、安心して使用できます。

BSバードジェル(防鳥忌避剤)

  • 中期段階の鳩対策
    鳩が寄り付き始め、ベランダ内部への侵入や糞害が目立ち始めた段階では、忌避剤と併用してバードピンを使用するのがおすすめです。着地させたくない場所にピンを設置し、糞害が集中する箇所には忌避剤を使うなど、状況に応じた使い分けが効果的です。

バードピンは結束バンドなどで簡単に固定できるため、着脱しやすいのが利点です。

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一方、バードワイヤーは、下地に穴を開ける必要があるため、設置場所を選ぶ対策となります。

BSバードワイヤー 防鳥ワイヤー

BSバードワイヤー 防鳥ワイヤー

被害が深刻化している場合は、防鳥ネットによる侵入防止が最も確実な方法です。ネット施工は、侵入経路を正確に見極め、隙間なく設置する専門的な技術が求められます。

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カラス(3〜6月):威嚇・攻撃を伴う巣作りと対策

カラスは3〜6月にかけて巣作りや産卵の機会が増え、活動が急激に活発化します。非常に学習能力が高く、卵やヒナを守るための攻撃性は、他の鳥と比べても際立っています。繁殖期のカラスは、人に対して威嚇行動を取ったり、頭上を低空で飛ぶなどの行動を見せることがあります。
巣作りの場所は、鉄塔や建物屋上の塔屋など、人が近づきにくい高所が中心で、鳩のように一般家庭のベランダに巣を作ることはほとんどありません。一方で、立体駐車場や建物内部に侵入し、断熱材やシーリング材を巣材として持ち去るなど、建物自体に被害を及ぼすケースもあります。

▼ カラスの習性についてはこちらでも詳しく解説しています。

⇒ カラスの鳥害対策とは!?

カラス対策で重要なのは、その高い知能を逆手に取った「学習させる対策」です。電気ショック対策は、「ここに止まると痛い」という経験を通じて危険な場所として認識させることができ、非常に高い効果を発揮します。一度学習したカラスは、そのエリア全体を避けるようになり、仲間にも情報を共有するといわれています。

BF3鳥類用電気ショック

BF3鳥類用電気ショック E-500

また、カラスの被害として最も厄介なゴミ荒らし対策としては、ふた付きの容器や専用のゴミ置き場を設置し、餌を取れない環境をつくることが第一です。

スズメ(4〜7月):建物内部への小規模侵入を徹底阻止

意外と見落とされがちなのが、4月から7月にかけて活発になるスズメの被害です。スズメは体が小さく、わずか2センチ程度の隙間があれば侵入し、工場の鉄骨内部や壁の裏側、換気口のフード内など、目につきにくい場所に巣を作ります。
スズメ対策では、ハトやカラス用のピンやワイヤーはほとんど効果がありません。むしろ、それらが巣の土台として利用されてしまうことすらあります。

▼ スズメの習性についてはこちらでも詳しく解説しています。

⇒ スズメの対策とは!?意外と知らないスズメの生態と人との深い関係!

需要なのは、侵入経路を特定し、物理的に遮断することです。スズメの対策には、目幅15mm程度の網目の細かい専用ネットや板金工作など、精度の高い「ピンポイント封鎖」が求められます。

BF3バードネット 15

鳥の生態を理解した早めの「鳥別対策」こそが確実な解決策

春は、鳥害が表面化する時期であると同時に、その後の被害の広がり方が決まる重要なタイミングでもあります。
鳥が寄り付き始めた痕跡や糞害、鳴き声といった小さな変化を見逃さず、本格的な繁殖期に入る前の段階で対策を講じることが、被害を最小限に抑えるための大きな鍵となります。
「まだ本格的な被害は出ていないから」と過信せず、本格的な繁殖期を迎える前に鳥種ごとの習性を踏まえた適切なアプローチを行い、衛生環境の悪化や騒音、建物へのダメージを未然に防ぎましょう。
また、春先に大型施設の建設や増築を予定しているなど、将来的に鳥害の発生が予想される場合には、専門家による事前の調査・診断を受けることも有効な選択肢です。設計段階から鳥害対策を織り込むことで、完成後に追加工事を行うよりも、結果的にコストや施工負担を抑えられるケースも少なくありません。

フジナガは、「鳥と人との共生」を社是とし、鳥を傷つけない鳥害対策アイテムの開発や、鳥の生態保全を前提とした鳥害対策の推進に取り組んでいます。
鳥害にお困りの際や、対策の進め方に迷われた際は、ぜひ一度ご相談ください。